由綺が『音楽祭』に初めて出場したあの冬から、幾つかの季節が巡った。
あれから、由綺の人気はさらに上がって今までにも増して忙しくなった。そう、理奈ちゃんと同じくらいに。
由綺は頑張っているけど、俺も支えているつもりだけれども、由綺の部屋から人の気配がなくなっていくのが分かる。
いくら俺が部屋を訪れるようになったといっても由綺がいなければこの部屋には誰も入らない。誰も住んでいない。
由綺が寂しくならないように、孤独に潰されないように、俺と由綺との絆が、また、揺らがないように。
俺は、俺に出来ることを考えた、そして、その決意を由綺に伝えた。
「――由綺、俺と一緒に住まないか?」
一緒に住もう(White Albumより) カワウソ
俺の突然の申し出に由綺はなんだかわからないと言う顔をする。
「だからさ、もう少し広いところ借りて一緒に住まないか?俺さ、結構暇だし掃除とかもちゃんとやるから。由綺が帰ってきても寂しくないように俺が部屋を維持してやるよ」
「……冬弥君、ありがとう」
由綺は笑いながら泣いていた。
心からだけど、いつもの元気を見せる笑顔じゃない。
気張りも何もない、無防備で、頼りなくて、迷子になって見つけられた子供のような笑顔だった。
「でも、そんなことしたら冬弥君に迷惑がかかっちゃう。やっぱり駄目。うん、凄く嬉しいけど、でも、だめだよ……」
それでも、俺に負担をかけまいと一生懸命に「大丈夫」と強がってみせる由綺。
「私なら大丈夫だから、頑張るから。冬弥君にこれ以上甘えちゃいけないもんね」
俺は……