目を逸らしていた。

「冬弥君?」

 そんな俺の様子に由綺がすまなさそうに俯く。

「……ごめんね、冬弥君がせっかく私のために言ってくれたのに、私ったら冬弥君の気持ち、全然考えていなかったよね。ごめんなさい……」

 違う。
 違うんだ、由綺。
 由綺から目を逸らした訳じゃないんだ。
 ただ――
 弥生さんが由綺の後ろに立っているだけなんだ。
 普段なら温度を感じさせない視線に絶対零度の冷気をたたえてこちらを見ているだけなんだよ。
 
 

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