その1 セクハラ大王健在為り

「はい。神咲です」
 神咲さんは携帯をとる。
 この音は、仕事がらみじゃないな。
「え? 真雪さん、ちょ、ちょっと待ってください!! ……あ」
 なにか一方的に切られたらしい。
 神咲さんは携帯をオフにするとため息を一つ漏らした。
「どうかしましたか?」
「はい、真雪さんたら、『せっかく彼氏と遅くまで一緒なんだから今日は帰ってくるな。帰ってきても。朝まで鍵は開けてやらん』だそうで……」
 あの人は、そういう人だったな。


その2 文明の利器の間違った使い方

 呼び出し音は神咲さんのバックから鳴っていた。
「あれ? なんでこんなところに?」
 神咲さんは慌ててバックの底から携帯を取り出す。
 いつもとは違っている型のようだが……
「新しくしたんですか?」
「いえ、わたし、こんなの買った覚えないです」
 疑問だらけであるが、とりあえず神咲さんは携帯に出る。
「はい、もしもし……、真雪さん? あのですね、いい加減にしてください!!」
 神咲さんは珍しく怒鳴ると携帯を切った。
「どうかしましたか?」
「はい、真雪さんたら『この動画撮影機能付き携帯でホテルからライブ中継しろ』なんてことを」
「……すいません。今、無性に握力測定をしたい気分なのですが」
「……ご随意に」
 神咲さんは開いた俺の手に真雪さんの携帯を差し出した。


その3 打つ手なし

 呼び出し音かと思ったが、これはリスティさんのテレパス……
「Hi. ボクの追跡能力なら全てお見通しだよ」
 リスティさん。それを言ったら終わりです。


その4 姉として

「はい、神咲……薫ちゃん?」
 電話の相手は薫さんのようだ。
「え? そ、それは……わかった、わかっているからもう切るから!!」
「どうかしましたか?」」
「はい、その……薫ちゃんたら『するのは止めんが避妊はちゃんとせんとね』って……」
 それは、かなり恥ずかしい。
 というか、なんでこんな時にかけてきたんだろう……

 
 俺の携帯も鳴っている。

 さて、どうしようか。

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