夢。
 夢を見ている。
 黒い闇の中で、ひとりで突っ立ってる夢だ。
 
 
 
 
 ここはどこだ? もしかしてまたさっきの世界なのか?
 その時、闇の中に誰かの気配を感じた。
 今度も祖父さんかな? だとしたら、ちょっと嫌だな。
 いきなりスポットライトが灯る。(なんでだ?)
 
「久しぶりだな。柏木耕一」
 
 柳川! 貴様、いったい誰の許可を得て、俺の夢に出てきやがった!!
 
「叔父に向かってつれないな」
 
 やかましいっ。引っ込め。
 
「そう言うな。生前は悪かったと思っているのだ」
 
 そう思ってるなら帰れ。
 
「だから罪滅ぼしにな…」
 
 いらん。いらんぞ、何も。
 
「……バラすぞ」
 
 えっ?
 
「あの女に、貴様があの女の妹に何をしたのかをバラすぞ」
 
 …それは…
 
「あの女の事だ。この秘密を知ればこの世までも追いかけて来るだろうな」
 
 有り得る…あの女性(ひと)なら
 ……何が、望みだ?
 
「物分かりがいいな」
 
 柳川の奴、勝ち誇った顔しやがって…
 
「俺の男になれ」
 
 ……
 ……へっ?
 
「俺がタチ。貴様がネコだ」
 
 おい。もしかしてそれって……
 
「柳川さん!」
 
 見たこともない青年が柳川の横に現れた。何故か背中にはギターを背負っている。
 
「貴之!?」
「柳川さん。ウソだろ」
「こっ、これは違うんだ!」
 
 思いっきり狼狽えてるぞ、柳川の奴。
 
「いつまでも一緒だって言ったじゃないか」
「あっ、ああ、そうだ。俺とおまえはいつまでも一緒だ」
「じゃあ、あいつは?」
「あれは俺の甥だ。何を血迷ったかここに来やがったから追い返そうとしていた所だ」
 
 嘘つけ。
 
「そうか。そうなんだね柳川さん」
「ああ。おい、柏木。そう言う訳だからとっとと帰れ」
 
 二人の影が一つとなってやがて闇にのまれていった。
 二度と見たくない光景だった。
 

進む

戻る

目次