シャワーを浴び着替えを済ませた千鶴は、支えるように寄り添う初音と共に居間に向かった。
既に夏の盛りを過ぎたというのに衰えを知らぬ陽射しは庭を明るく照らし出し、風に乗り微かに蝉の声が聞こえてくる。
しかし屋敷の中は外の世界とは隔絶した、暗い陰鬱とした冷たさを宿していた。
叔父を亡くしてからずっと続いていた陰鬱な暗さ。
この数日やっと晴れ間が覗いたというのに、それ以上の暗闇が屋敷を支配していた。
居間まで後少しという所で寄り添う初音からスッと身を離した千鶴は初音に先に居間に入るように手で促し、自分も入ると障子戸を閉め、微かに息を吸ってからいつもの席に向かった。
屋敷を覆う闇を呼び込んだのは、他でもない千鶴自身だった。
三人の妹は黙りこくったまま、千鶴がいつもの席に腰を下ろすのを待っていた。
梓は何も言わず腕を組んで畳を睨み付け、楓は眼を瞑り静かな緊張感をその身から発散している。
先に腰を下ろした初音が俯いたまま姉達をチラチラと伺い、重苦しい雰囲気に耐えられなくなったのか上目遣いに視線を巡らしながら口を開いた
「あの、千鶴お姉ちゃん。少しでも何か食べた方が……」
初音は微かに横目を向けた梓の険しい視線に声を詰まらせ、膝に置いた自分の両手に視線を落とした。
「初音、心配いらないわ」
かろうじてそう言った千鶴は、心の内で、心配される資格など無いのだから。と呟いていた。
「姉さん」
瞑っていた瞼を開け、楓は促すように口を開いた。
心配するなと言っても、千鶴の口調や態度からは常の生気が抜け落ち、余計初音を不安にさせただけだ。
上目遣いに千鶴を見ては、不安そうにきょろきょろと梓と楓を伺っている。
初音の為にも梓の激発を抑える為にも、話は手短に済ませる必要があった。
「……ええ」
「それじゃ」
楓に促されるまま、千鶴は昨夜のあらましを耕一との関係だけを省き、ぽつりぽつりと語りだした。
楓が質問し千鶴が答える間、初音も組んでいた腕を解き膝を強く握り閉めた梓も口を挟もうとはしなかった。
千鶴が意識を失うまでを語り終ると、楓は倒れていた男の事を尋ねた。
しかし千鶴にも、あの男が柏木と同じ鬼の血を引く者で在る事しか判らなかった。
そして楓は、幾度も尋ね様としながら、どうしても尋ねられなかった質問を口にした。
「どうして、耕一さんを呼んだの?」
千鶴はピクリと僅かに肩を震えさせただけで、答え様とはしなかった。
「楓お姉ちゃん。だってお姉ちゃん、お兄ちゃん励まそうって……」
鬼の力について、普通の人より怪我の治りが早いぐらいの知識しか無い初音は、姉の様子を見かねて口を開いた。
だが梓に睨まれ、もごもごと口篭もると視線を落した。
シンと静まり返った居間に、古風な振り子時計の音だけが、静かに時を刻んだ。
「初音。あんた、あたし達の力感じるだろ?」
「う、うん。寝てる時とかにだけど」
やがて響いた梓の怒りを抑えた押し殺した声に、初音は俯いたまま小さな声で答えた。
「昔の話して不味いんなら、あたし達と一緒にいて鬼が起きない訳無いだろっ!」
梓は吐き出すように言う。
千鶴の話から、やっと梓にも耕一との想い出話を禁じたれた理由が判った。
「で、でも。叔父ちゃんの四十九日だし」
梓の怒声に怯えながらも、初音は反論する。
「満月なんだよ! 只でも鬼が騒ぐんだ! こうなるの判ってて呼んだんだっ!!」
我慢仕切れずに叫んだ梓の全身は怒りに戦慄き、赤く染まった顔で固く目を瞑っていた。
梓の言葉を否定しようと初音は首を弱々しく振り、否定を求め千鶴に縋る様な瞳を向けた。
「ごめんなさい。でも、耕一さんを励ましたかったのは本当なの。それだけは信じて」
顔を伏せたままの千鶴の囁く様な声に、初音は小さく安堵の息を吐き、楓は予想していた答えだったのか表情を変えなかった。
しかし、梓は激しい怒りに燃えた瞳で千鶴を睨み付けた。
「励ますだ?! 励まされたのあたし達だろ! 初音だって、楓だって、あんただって叔父さん帰って来たみたいで喜んでただろ!」
梓の怒号は関を切った様に止まろうとしない。
「耕一は何にも知らなかったんだろ!? それを勝手に呼んどいて。だめだったから殺すだっ!? 冗談じゃない! 耕一は道具じゃない! 叔父さんの替わりじゃない! あんたは自分の都合で、使い捨ての道具みたいに耕一を使っただけだ!!」
梓は千鶴を姉と呼ぼうともしない。
膝を握り締めた拳を振り上げないのは、最後に残った、姉としての千鶴に対する習慣でしかない。
千鶴には、梓に返す言葉がなかった。
言い訳なら幾らも出来る。
妹達の叔父を亡くした寂しさを紛らわす為。
真実、耕一を励ましたかった。
幾多の人が殺され、他に方法がなかった。
だが、今となっては、そのどれもが虚しい言い訳に過ぎない事を、千鶴自身が一番よく知っていた。
頼るべき叔父を亡くし、一番辛かったのは。
一番耕一を必要としたのが自分だと理解した今となっては、自分の心を騙し続け言い訳に正当性を持たせられなかった。
僅かな記憶しか無い耕一に叔父を重ね合わせ、縋ろうとした現実の前では、梓の非難こそが真実だった。
自分の耕一自身の意思を無視した数々の行為が、今の事態を引き起こした。
ダンッ!!
突然テーブルを殴り付けた梓は、険しい表情でテーブルに身を乗り出した。
「なんで黙ってるんだっ! なんとか言えよ!!」
「梓お姉ちゃん、千鶴お姉ちゃんまだ……」
ビクッと震えた千鶴を庇う様に、初音が梓の腕を引いた。
「初音っ!」
梓にギロリと睨まれ、初音は身を縮めた。
耕一には照れや恥ずかしさから乱暴な行動が目立つ梓だが。
妹、特に初音に対してはいつも優しい。本気で睨み付けられるなど、初音に取って初めての経験だった。
梓の怒声に堪え切れずに目元にじんわり涙を滲ませた初音を見て、梓は眼を逸らして座り直した。
「梓姉さん、落ち着いて下さい」
楓の静かな感情を欠いた声に、梓は燃える瞳を楓に振り向けた。
楓が耕一を好きなのが、梓には判っていた。
千鶴が耕一を殺すと取り乱した楓の姿がそれを証明している。
あれ程取り乱した楓が、今では平静でいるのが梓には余計腹立たしい。
「楓、平気なのか? あたしは許さない。耕一が許しても、あたしには許せない!」
深い悲しみを湛える静かな瞳に見詰め返された梓は、怒りが萎んで行く気がした。
「叔父さんは八年間も苦しみ抜かれた。耕一さんにも苦しめって?」
楓の感情の失せた声が梓の頭に木霊し、怒りが急速に萎えていった。
「私も耕一さんに生きていて欲しい。でも、それが耕一さんに取っていいのかどうか……」
耕一に生きて欲しい。
それは楓も梓も同じだ。
だが、それは自分達が耕一を失いたくない為。
自分達の為に生き地獄のような毎日を耕一に耐えろと望むのが、果たして正しいのか?
許されるのか?
「叔父さんがもしも耐えられなかったら、姉さんは……」
梓にも初音にも楓の仄めかした事実は、今まで以上の衝撃を与えた。
叔父が耐えられなかった場合、姉が取る行動は昨夜と同じ。姉妹の親代わりで在り、父同然、イヤ父以上だった叔父を殺す。
八年前、鶴来屋の利権に群がる亡者から、自分達を救い、自分達を育ててくれた叔父を殺す。
梓も千鶴がどれ程叔父を慕っていたかは、十分すぎる程知っていた。
「私には、姉さんを責められない」
梓から、楓の言葉に反論する声はなかった。
梓と初音は、千鶴の項垂れ肩を落とした小さな姿を見る事しか出来ない。
知らない所で、姉がどれ程の苦しみを抱えていたのか知らなかった自分が、姉を責めるのは間違いだとイヤでも梓は理解させられた。
だが、それと千鶴を許せるのかは別だった。
梓自身なら兎も角、身に降りかかる危険を何も知らせず呼び寄せた挙げ句。殺され掛けたのは、梓に取って掛け替えのない男なのだ。
怒りの行き場を無くした自分の心を、梓は無理矢理、今の耕一の状況に向けた。
「だからって、どうするんだっ?! 耕一を放っとくのかっ!!」
「お兄ちゃんも心配だけど、お姉ちゃんだって、今は……」
チラッと初音が視線を走らせた千鶴は、最後の生気も尽きたような蒼白い顔をしていた。
項垂れ肩を落とし、虚ろな目をテーブルに向けている。
「まだ生きてたからって、今、生きてるか判ん無いだろ!! 腹に穴空いてんだろ!!」
固く目を瞑った梓は、行き場を無くした怒りを畳に向って吐き出す。
「…ごめん…なさい」
千鶴の口から小さな呟きが洩れ、梓は顔を上げキッと千鶴を睨み付けた。
「ごめ……」
衝動的に怒鳴りかけた梓は、初音といつの間に移動したのか反対側から楓の二人に肩を抑えられ、楓に口を手で塞がれていた。
「梓姉さん。耕一さんが心配なのは、みんな同じです。落ち着いて下さい」
静かに話しながらも梓の肩にかかった楓の手の力は、梓が顔をしかめる程に強い。
梓同様千鶴を責めたい気持ちを、楓は何とか自制していた。
「今肝心なのは、耕一さんが鬼に呑まれたのか。もう一人の鬼が真犯人なのかどうかです」
冷静に話しながら、楓の手には更に力が入っていく。
「生きていれば、ですが」
ビクリと震えた千鶴に一瞬向けられた楓の視線は、初音と梓がゾッと身震いする程、冷い。
梓はこの時、姉ではなく、この妹が、もしかすると姉妹の中で一番畏怖する存在では無いかとさえ感じた。
「そんなの、後でいいだろ」
「それがはっきりしなければ、耕一さんを見つけても、助ける方法がありません」
睨み付ける梓に楓は静かな声で返し、梓の肩にかかった力が思慮の浅さをなじるように強まる。
「判ったよ。だから手を離せって」
姉のプライドに掛けて、痛いから等とは、梓は妹に言わない。
「ごめんなさい」
にこりともせず謝り、楓は肩から手を離した。
「犯人かどうかですが。千鶴姉さんは、どうして耕一さんだと?」
異様な冷たい雰囲気をまとった楓の声は、言葉で相手を切り裂く様に鋭かった。
「…昨日公園で、鬼の胸に傷を付けたの。その痕が耕一さんにも在ったのよ」
楓に操られる人形の様に、千鶴は抑揚の失せた平坦な声で応えた。
楓の放つ冷気を前に、初音と梓は硬直した様にジッと楓の横顔を見詰めていた。
「にも? にもって、どういう意味です姉さん?」
「…楓、何言ってんの?」
梓と初音は、楓の質問の意味が判らず楓を見詰め、梓が恐る恐る尋ねた。
「耕一さんに在ったではなく。にもって」
「楓、言葉じり捕らえたって……」
「…楓の言う通りよ」
苛立たしげに楓の過敏な反応をたしなめようとした梓は、千鶴の低い呟きに顔を千鶴に向けた。
「…なん…だって?」
梓は混乱した頭で、姉の抜け殻の様な姿を見詰めた。
他に証拠とした痕を持つ人間がいて、千鶴が耕一を犯人と決めつけたなど、梓の思考の範疇では処理し切れない言葉だった。
「…昨夜死んだ鬼にも、痕が在った」
普段なら有無を言わせず即座にベッドに放り込むだろう姉の姿を目にしても、梓は眉一つ動かさなかった。
自分でも理解出来ない感情の動きに束の間息を吐き、梓は千鶴に目を戻した。
千鶴の姿を見ても姉を心配する気が湧かず、逆に怒りにも似た暗い闇が梓の心の内に広がっていた。
「あの鬼に? じゃあ耕一じゃ」
自分の心に戸惑いながら、梓は聞き返した。
「…耕一さんにも在ったわ」
機械的に答える千鶴の姿は、そこに存在しているのが影の様に儚い。
「どういう事だ。両方に同じ痕?」
「多分、耕一さんに影響を与えていた鬼」
「何の事だ? 影響って、あたし達の力じゃないのか?」
瞼を伏せ唇を指で弄る楓に、梓は顔を戻す。
「耕一さんの鬼はこちらに来てから、私達か他の誰かの影響を受けていた。多分その鬼の影響かも」
「でも、何で同じ痕が?」
梓は違和感を感じながら、楓と話していた。
いつもなら千鶴が主導権が取って進める会話を、日頃無口で大人しい楓が、千鶴の役目を果していた。
身にまとう冷たい威圧感は、千鶴以上かも知れない。
「双子はどちらか片方が傷付くと、同じ傷が出来る事が在ると言うから。意識が影響を受けていれば」
「そんな事、在るのかよ?」
「心理学を学んだ、千鶴姉さんの方が詳しい筈」
顔を静かに千鶴に向け、微かに楓の瞳に不安そうな陰りが浮かんだ。
「深い催眠状態で暗示をかけ火傷したと信じ込めば、実際に皮膚に火傷を負う事も在るわ。まして夢で実体験に感じるほど、深層意識で繋がっていれば……」
千鶴は質問された事だけに淡々と答えた。
いつもの楓と千鶴の立場が逆転した違和感に、初音だけが膝で千鶴にそろそろと近付き。
千鶴を気遣う様に、隣からそっと覗き込んでいた。
「…あ、あの、千鶴お姉ちゃん」
気遣わしげに千鶴を見ていた初音が、考える様に視線を下げ、顔を上げそっと千鶴に話しかけた。
「なに?」
初音に向けた千鶴の頬が、いつもの笑顔を作ろうとする様に微かに機械的に歪む。
「…あの昨日って。お姉ちゃんが帰って来るまで。耕一お兄ちゃん、…夕方から、部屋でずっと寝てたんだけど」
言い難そうに言うと、初音は静かに目を伏せた。
「公園から電話したけど、誰も出なかったわ」
譫言の様に返す千鶴に初音は肌寒いものを感じ、不安から二人の姉に目を向けた。
「あたしが電話した時は居たよな」
そんな初音の様子にも気付かず、腕を組んで考え込んでいた梓は、眉間に皺を寄せ首を傾げながら尋ねた。
「う、うん。それから晩御飯のおかず買いに出掛けたから、その間かな。帰って来たら、お兄ちゃん寝てて、夕御飯に起こしに行っても起きなかったから」
慌てて梓に答え、助けを求める様に楓を見た初音は、楓の注いだ鋭い視線に小さく身震いした。
「初音、帰って来たのは何時頃?」
「…ええと、お兄ちゃんの様子を見に行って居間に戻ったら時計が鳴ってたから…八時かな」
何の感情も見せず尋ねた楓に初音が答えると、楓は千鶴に目を戻した。
「姉さんが電話したのは?」
「…八時……前」
震える唇で喘ぐように答えた千鶴の返事に、楓は小さな安堵の息を吐いた。
「入れ違いかよ」
確証を得られず気落ちした溜息を吐いた梓が頭を掻くのに向かい、楓は少し弾んだ声を上げた。
「いくら鬼でも、数分で隣駅の公園から家まで移動して、寝てるなんて無理です」
「じゃあ」
「耕一さんは、犯人じゃない」
嬉しそうに言った楓の言葉で、千鶴の身体が再びピクンと震えた。
「何て事った。一言聞きゃ済んだのかよ」
少なくとも殺戮の犯人でない事が判り、梓も頭を掻きながら安堵の息を吐く。
「梓姉さん、そんな事を今更言っても……」
「だけど犯人でないなら、どうして帰って来ないんだ?」
千鶴を気遣かった楓のたしなめる口調にも気付かず、梓は考えたくない可能性を否定しようと敢えてそう聞いた。
「それに、何故こんなに急に目覚めたのか」
楓も耕一が死んでいる可能性を排除し、敢えて前向きな考えのみに目を向けた。
「目覚めてたんじゃないのか?」
新たな疑問を提示され、梓は首を捻り楓を伺った。
「夢の中で別の鬼の行動を見ていたなら、耕一さんの鬼は、まだ完全に目覚めてなかった筈です」
視線を落としたまま唇を弄り答えた楓は、その幼さを残した怜悧な面に苦渋を滲ませた。
耕一の鬼と影響した鬼の区別さえ付けていれば、最悪の事態は回避出来た。
恐れず耕一に心を開いていれば、耕一自身か他の者なのか、楓の姉達より鋭い感覚で突き止められたかも知れない。
楓も千鶴同様自分を責め苛んでいた。
「いきなり現れたって事なのか?」
話でしか鬼の暴走を知らない梓には、より多くの情報を持っている楓から、今は情報を引き出すしかない。
「いえ。昔一度現れていますから、入れ替わったと言う方が正しいかも」
「入れ替わった? じゃあ今の耕一は、耕一じゃないって事か?」
「多分、鬼の意識と耕一さんの意識が入れ替わって。それで帰って来ないのかも」
「鬼と耕一が入れ替わるって? まるで映画のジキルとハイドだな。でも、どうやったら元の耕一に戻るんだ。それに何処を探しゃいいんだ」
耕一の行く所など、この街では柏木家しかない。
もし街から出ていれば、探す術もなくなる。
梓は頭を掻きながら、この数日耕一が行った所を思い出そうとしていた。
「ジキル…ハイド…」
「…お姉ちゃん…」
眉を潜め呟いた楓は初音の囁く様な声で、初めて初音の泣き出しそうな顔と千鶴の異変に気付いた。
楓自信、自分が他に目を向ける余裕を無くしていた事に、その時になって初めて気が付いた。
「千鶴姉さん。休んで下さい」
感情を取り戻した声で気遣わしく千鶴の隣に腰を下ろした楓は、反対側に座る初音に頷き掛け千鶴の肩に優しく手を置いた。
肩に手を置いた楓にゆっくり顔を向けた千鶴の瞳は暗く澱み、懇々と湧き出る涙が頬を濡らしていた。
千鶴の腕を肩に回し立ち上がろうとした楓は、その力の抜けた身体の軽さに眉を潜め唇を噛み締めた。
なされるがままふらふらと立ち上がった千鶴を反対側から支えようとした初音は、肩を静かに叩かれ梓に場所を譲った。
梓と楓に両脇を支えられ、千鶴は引きずる様な危うい足取りで、姉妹の部屋が並ぶ一角に向かった。
楓はベッドに横たえた千鶴に睡眠薬を飲ませ、初音に付き添いを任すと梓と供に居間に戻って行った。
蒼月夜五夜へ