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柏木耕一が米原の駅を降りたのは十月、金曜日の夕方だった。日曜日に祝日が重なって出来た三連休を隆山で過ごすための途上である。午前中にどうしても外せないゼミがあったので、この時間になってしまった。ここで在来線に乗り換える必要がある。
先週、耕一は隆山の従姉妹達に手紙を出した。年賀状すら書かない耕一にとって、久しぶりに書いた手紙だった。本来なら電話のほうが連絡手段としてはいいのかもしれないが、こういうときは手紙のほうが風情が在るような気がしたのだ。
しかし、いざなにか書こうとした時には、ほとんど何も思いつかなかった。今度の連休に遊びに行っていいか、ということ。いろいろと話したいことがあるということ、用件だけをシャーペンで書き殴っただけの手紙を出した。
五日後に返事が来た。私達皆お待ちしてます。ボールペンで達筆に返事が記されている。その後違う字で、待ってるよ、待ってます。待ってるね、と記されていた。
ここまでずっと読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。
ちょうど三ヶ月の間に、これだけの人が来て下さるとは思いもしませんでした。できればそのうちほとんどの人が読んでいてくれればいいな、と思います。
特急列車は快調に夜の北陸路を走る。できればもっと早い時間に来て、車窓を楽しみたかった。東京から隆山へむかう道はいくつかあるが、今回耕一がこのルートを選んだのは感傷だと自分で思っている。昔、両親と一緒にこの特急に乗ったことがある。もちろんもっと早い時間だったから、初めて見る風景を見てはしゃいでいたのだ。
あれはほんの数日前の出来事のようにも、また別の世界の物語のような気もする。
突然失礼な「パクリいいですか」メールに快く応じて下さった夏木蒼太郎さん、沢村奈緒美さんありがとうございました。
夏木さんの次郎衛門の墓のイメージがなければこの拙作がありえなかったのは第32話の通りです。千鶴の耕平や鶴来屋に対する生理的な嫌悪感について大幅にカットしてしまったので、沢村さんの作品をあんまりパクリきれなかったのは残念です。
金沢で今度は急行列車に乗り換えた時には八時を回っていた。この列車は隆山行きなので、もうゆっくり安心していられる。耕一は隆山につくまでは何も食べないつもりだったが、さすがに空腹が我慢できなくなってきた。許せ梓。耕一は足元の女物の傘に謝った。以前駅舎で交換したものだ。耕一は東京で買った菓子を今頃になって開いた。
サークル”プロジェクトD”の皆さんに感謝。
特にバナーの他いろいろメールなどを送って下さった杉田さん、立ち上がったばかりのここにたびたび書き込んで下さった慶次郎さん、有り難うございます。今後一緒にいろんなモノをつくりたいですね。
列車が駅でないところで止まると、耕一は不安になる。ほとんどはただの信号待ちだったりするのだが、今回だけはその悪い予感が当たったようだ。動かない列車に車掌のアナウンスが流れる。少し前の踏み切りで人身事故が発生、現在その処理のためにしばらく停車する。他の旅客達と同じように耕一はため息をついた。ただでさえ夜遅くに到着する列車なのに。
家に電話しようかとも考えたがその手段がない。しかしよく考えてみると、従姉の千鶴は旅館の経営者である。隆山行きの急行列車の遅れを真っ先に耳にする人間のはずだ。そう考えると耕一は少し気が楽になったが、それでも時間が無駄になるのはむかつく。
このまま時間がとられてしまったら、特に末の初音は寝てしまうかもしれない。
耕一は一眠りしようと思ったが、こういう時に限って眠れない。たっぷり二時間近くも停車し、再び列車が動き始めた時、車内に力無い歓声とため息が満ちた。
リンクを貼って下さった方々に感謝。最初に宣伝させていただいたFLAGYX N()TE痕掲示板を始め、皆さんがリンクを貼って下さるたびに来客数が目に見えて増え、そのたびに新たなやる気がおきました。
隆山の駅を降りた時、既に日付が変わっていた。鶴来屋や他の旅館の人がそれぞれの予約客に呼びかけたり、今日の宿を捜す人たちの応対をしている。終バスはもう出てしまったのだろう。それぞれの旅館のマイクロバス以外のバスは見えない。
タクシー乗り場では早くも長い列が出来ていた。
歩いて帰ろう、耕一はそう思った。駅から電話をしようと思ったが、ここで声を聞いてしまうのはもったいないような気がしたのでやめた。
耕一には従姉妹達に伝えなければいけない過去がいっぱいある。でも話したいことはむしろこれからのことだった。これからどうするか。それについていくらでも話したかった。
感想メールやゲストブックにお言葉を遺して下さった皆様ありがとうございます。立ち上げたばかりの時に詳しく感想メールを書いて下さったoneevenさん。何度もメールやゲストブックで励まして下さった”いわは”さん。その他私にメッセージを下さったすべての皆様、本当に、本当にありがとうございました。
耕一はかって自分も住んでいた家の前に来た。
前にこの家の前を通った時固く閉ざされていた門は大きく開かれていて、明明とした門灯に照らされていた。門の前に立ち家の中を覗くと、玄関はもちろん庭でも灯りがともされている。
家全体が耕一の帰りを歓迎してくれている。
耕一は玄関へと足を進めた。見ると玄関の中までが暖かい光で満たされている。
多分ここのことなんて知らないと思うけど・・・・
秋葉さんなど面白い同人誌を世に出される方々。
ごとPさんのように奇麗な絵を描かれる方々。
BiTmap Pubishing、BOOKS NIWAKA、MIKAN工房、Leaf伝言板(即興小説)などなどネット上のもの書きの方々。
すべての先達に感謝!
耕一は玄関の戸の前に立った。
そしてかって父、賢治がこの戸を開けた時のことを思い出した。
そうだ俺は”ただいま”ってあいさつしよう。
大きくもなく、小さくもなく、普通の声で。
今、耕一がゆっくりと戸を滑らせる。
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第32話