愛の電波劇場
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茜編(前編) しゃむてぃるさん
 
 

雨の日は届かないんじゃ? 
 

  雨の日、珍しく早起きした俺は空き地でクラスメートの里村に出会った・・・

「誰・・・」
「クラスメートの名前ぐらい覚えとけ。同じクラスの折原だ」
「・・・何か用ですか?」
「いや、なにやってるのかな?と思って・・・」
「待ってるんです」
「なにを?」
「・・・あっちのせかいからの電波です」
 
 これが受信しちゃった女の子なのか・・・
 
 
 

不幸を呼ぶ少女?
 

 里村に興味をもった俺は、昼食を食べる為に移動している里村の後をつけていた。
 その途中……

「階段、危ないです…」
「えっ……どわっ」

 突然足を捕まれるような感覚。
 ケガはしなかったものの驚く俺をみて、里村は…

「私に関わると不幸になります……」
 
 そういって去っていった。
 里村、せかいがちがうぞ……
 
 
 

まかり間違っても言わないように
 

 中庭で茜と昼食をしていて、茜の弁当を食べたのだか・・・

「こんな時は感想をいうものです」
「10点」
「・・・何点満点で、ですか」
「100・・・」

 ちりちりちりちりちりちり・・・・

「じ・じゅ・10点、ももももも文句なしにうまかったたたた」
「そう・・・」
 
 
 

目的のためには手段を選ばず
 

 茜を誘って商店街に繰り出した俺だったが、ファンシーショップで
 茜は奇妙な物体(ぬいぐるみ)に見入ってしまった……

「茜、その物体が気にいっているのか?」
「はい」
「……茜、諦めろ。50万は高すぎだ」
「………はい」
「大丈夫だって、絶対売れ残って値下がりするから」
「わかりました」
「そうか」
「トラップを仕掛けておきます……」
 
 トラップって……一体、何?
 
 
 

そりゃそうでしょ 
 

 長森と登校していると、校門でまたあの柚木詩子と出会った……

「やっほぉ、お二人さん」
「…柚木、お前学校はいいのか?」
「本当に大丈夫なの? 柚木さん」
「あはは、大丈夫よぉ」

 この能天気さと無節操さは、やはり……

「お前も受信しちゃっているのか?」
「はぁ?」

 ……しばしの沈黙。

「えっと、ごめんねぇ。浩平たまに変なこというから」
「ううん、全然気にしてないよ」

 俺かっ?俺が変なのかっ?
 
 
 

さわらぬ神に祟りなし 
 

 茜とそれなりに仲良くなったある日・・・

「なあ、茜。あそこにはなにがあるんだ?」

 あそことは雨の日には茜がいつもいる、あの空き地のことだ。

「あそこには・・・」
「あそこには?」
 
 茜は『クスッ・・』と笑いながらいった。

「・・・狂気の扉があります」
 
 聞かなかったことにしよう。
 
 
 

やっぱりあなたも同類項
 

 クリスマスの日、茜と澪と詩子でパーティをした。
 アルコールも入り、盛り上がりは日を越そうとしていた……

 頬を上気させ、とろんとした眼をした澪がスケッチブックに何か書いて見せた。

「悪い、それはさすがに読めない」

 紙の上にはミミズがのたくっている。

「ねむたい。そう書いてあります」
「読めるのか? 茜」
「いいえ……」
「じゃぁ何故?」
「……電波が届きましたから」
 
 
 

受信用ブースターはいかが?
 

 クリスマスパーティの後、雨の中を帰る茜を送っていく途中、あの空き地にやってきた。

 茜は空き地の中で立っている……

「……ここで何をしているんだ」

 ゆっくりと振り向き、茜は言った……

「待っているんです」
「待っているって……誰を?」
「私の、幼なじみ……この場所で消えた、私の好きだった人」
「…………」
「だから私は……この場所で電波を待ちつづけるんです」
「で、電波って……雨の日なのは?」
「雨の日は届きにくいから。だから、より近くでないと……」

 なるほど……俺は妙に納得した。
 
 
 

浮気をしたらどうなることやら
 

 年を越し冬休みの雨の日、ゲームセンターの帰りにあの空き地で茜を見かけた……

「茜……どうしたんだ?」

 茜はゆっくりとこっちを向く。

「浩平……どうしたの」
「いや、ただ通りがかっただけだ」
「ゲームセンターの帰りですか?」
「どうして解ったんだ?」
「……ゲームの電波が残っています」

 俺は茜の前では、プライバシーが存在しないことを悟った……
 
 
 

発信元は?
 

 冷たい雨と風が容赦なく打ちつけるある日、
 学校を無断欠席した茜を探した俺は、あの空き地で茜を見つけた……

 茜はこの雨と風の中、傘もささず突っ立っていた。

「茜ぇっ!こんなところで何やってるんだっ!」

 俺は思わず駆け寄った。

「司……」

 茜は目の焦点があってなく、その体は冷え切っていた……

「しっかりしろ!茜ぇっ!」
「司司つかさつかさつかさツカサツカサツカサ……」

 だめだ、受信しちゃっている……
 
 

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