陽の章 九


 どんより雪雲が垂れ込めた、冷え込む大晦日。
 薄暮の中でなお重い重厚な門構えを前に、俺は長い間立ちつくしていた。

 実の所、来たくは無かった。
 しかし置いたままの荷物を、どうしても取りに来る必要が在った。着替え等はいいが、借りた本だけは持って出ないと行けなくなった。
 借りた本が、稀覯本だったのが禍した。
 電話で梓に持って来てくれと頼んだが、あっさり欲しかったら取りに来いと怒鳴られた上、電話も切られた。
 由美子さんに直に取りに行って貰おうかとも考えた。だが俺が姿を消した後では、流石に不安が大きく考えを捨てた。

 来ては見たものの、入るのを躊躇い門を見詰めつっ立っていた俺は、当然だがひょこり出て来た初音ちゃんに見つかった。
 にっこり笑顔を向ける初音ちゃん。
「お帰りなさい。耕一お兄ちゃん」
 言いつつぱふっと抱きつかれ。
 俺は荷物を取りに来たとは、言い出せ無くなった。
「初音ちゃん、ただいま」
 笑顔に応えながら頭を撫でる俺は、優柔不断だ。
「千鶴さんと楓ちゃんは?」
 初音ちゃんは表情を曇らせ、ぷるぷる首を横に振った。
 もう一度頭を撫で、俺は溜息を吐いた。

 俺が居なくなれば、姉妹がばらばらになる事も無いだろう。
 楓ちゃんには悪いが、俺は奴の想いに従うつもりはない。
 どちらにしても、楓ちゃんも千鶴さんも苦しむ事になる。
 まして、初音ちゃんまで巻き込みたくは無い。
 唯一の希望は梓だが、昨日の調子では、あまり当てには出来そうもない。
 後は、四人の子供に鬼の覚醒の無い事を祈るのみだ。

 初音ちゃんに腕を引かれ、俺は居間に向った。
 居間にいた梓が、俺を見てニヤリと笑ったのが俺の感に触った。
 こいつがもう少し思慮に富んでいれば、俺も少しは安心出来る。と恨みがましい視線を向け。
「よう耕一。帰って来たな」
「ああ。お蔭様でな」
 俺と梓は、陰湿に火花を散らした挨拶を交した。
「初音。耕一が帰って来たって、二人に言ってきな」
 梓は俺から目を逸らさず、硬い声で初音ちゃんに命じた。
「ばっ!」
 馬鹿野郎と言い掛け。俺と梓を見比べる、初音ちゃんの揺れる瞳に声が詰まった。
「…耕一…お兄ちゃん?」
 命令口調の梓と、怒鳴り掛け止めた俺を当分に見。初音ちゃんはどうしたらいいのか迷い、俺の顔を覗き込み小さく呼んだ。
「初音、いいから。部屋の外から言えばいいって」
「う、うん」
 初音ちゃんは梓にせかされ、俺に不安そうな瞳を向け、ゆっくり廊下を歩き出した。
 初音ちゃんの姿が廊下の角を曲がり、見えなくなるのを待って、俺は梓を睨み付けた。
「梓。お前何を考えてる?」
「耕一は、初音に甘いからな。見に行かせて正解だったな。いやぁ〜我ながら、偉い」
 梓は悦に入って得意そうに胸を張る。
「あほが。何で部屋取ったと思ってる」
 軽い虚脱感に襲われ、俺はその場に座り込んだ。
「あほは、どっちよ。ちゃんと話し合えばいいんだよ。家に居た方が話しやすいだろ」
 勢い込んで言う梓の自信満々の態度に、こいつに希望を托したのは間違いだった。
 俺はそう確信した。

 当然か。
 当初の予定では、千鶴さんを交え親父達の話をした後で、梓を教育するつもりだった。
 いきなり僅かな情報で、千鶴さんの辛さや苦しみの深さを理解しろと言っても無理かも知れない。

「お前。全然、判って無いだろ?」
「何だよ? 判って無いの耕一だろ」
 それでも梓に賭けるしか無い俺は、藁をも掴む思いで重い口を開いた。
「千鶴さん、すぐぼろぼろ泣くんだ。拗ねるわ、嫉妬焼くわ、俺を不安そうに見るしな」
「ぼろぼろ泣く、千鶴姉が? 拗ねると焼くは判るけど。不安って、あれだよね?」
 俺は嘘ばっかって顔を向ける梓を見て、人選の不自由さに両手で顔を覆った。
「お前、千鶴さんの何を見て来た? どうして親父が話したと思ってる? お前らの前では、役やるだろう?」
 怒鳴り付ける気力も無くなった俺は、淡々と話していた。
「役って? 耕一、ちょと待てよな。そりゃ千鶴姉、怒ると別人見たいだし、母親役だってやってるよ。だけど、あんたの言い方じゃ、普段から似せ者みたいだろ」
 俺を睨み、梓は不満げに口を尖らす。
「と、言うより。弱い所を見せないだけだ。考えろって言っただろ? お前、頭無いのかよ。それ判って欲しいから。あんな話までしたって言うのに。何も考えなかったのか?」
「考えたよ。だけどさ」
 上目遣いに両手の指を付き合わせ、梓は居心地悪そうに俯く。
「お前の知ってる千鶴さんに出来るのか? わざわざ、いつでもお前らを気にせず話せる様、部屋まで取ったって言うのに」
 小さく馬鹿野郎と呟く俺に、まだ本調子でないのか、梓は怒鳴り返しては来なかった。
「でもさ、千鶴姉が出て来なきゃ、話しになんないだろ」
「俺が帰って来て、初音ちゃんが心配すれば、無理しても出てくるさ。理想的な姉さん役でな」
 じろりと睨むと、梓は乾いた笑いを洩らした。
「全部一人で背負い込んで、親父一人を支えに生きて来たんだ。今は落ち着いたが。お前らが居なかったら。親父の後を追ってるぞ」
「追うって!」
「馬鹿! 小声で話せ。初音ちゃんに聞かれたら、どうする気だ」
 俺は声を上げ、四つん這いで顔を突き出す梓の口を手で押さえ、小声で囁き頷くのを待って手を離した。
「でも千鶴姉、叔父さんが死んで辛そうだったけど。一番立ち直りは早かったんだよ」
 梓は言われた通り小声で囁く。
「お前らの前ではだ。生きてたんじゃない。死ねなかっただけだ。俺を殺しても、死ねないんだ。梓、判ってくれよ。それが出来るほど、死ぬより辛い思いをして来たんだ。それでも笑顔を作ってる」

 夏に見た姿が心に浮かび、虚ろが俺の心を冷え込ませる。
 涙さえ流さず慟哭する姿。
 光り失せ、虚ろに落ちた瞳。
 儚く消え去りそうな蝋燭がごとき姿。

 俺は、あの姿の意味が判らなかった。

 冷え込む心が魂を凍らせ、俺の業を蘇らす。
 過去の恨みが、過去の狂気が。
 俺が望んだ狂喜、暗い愉悦が蘇る。
 俺の罪、俺の業。
 俺が受けるべき業が、あの姿を産み出した。
 心を鋭利な氷の刃が裂き、暗い炎が魂さえも焼く。
 俺が受けるべき業。

「だ、だってさ。千鶴姉が、そんな…後追いなんて…」
 俺はうろたえる梓の肩を掴み、顔を俺に向けさせた。
「梓、頼むから判かってくれ」
「でも、耕一」
「頼む。絶対お前らに、そんな素振りを見せない。お前達が。…お前の明るさが助けになってる。いや…判からなくても…いい。…せめて…心配だけでも掛けるな。…それだけでも…いい。…出来ればで…いい。…少しでも…いいから。…力に…なれる位…大人になって…くれ。…もう…楽にして……やりたいんだ」
 俺は冷たい闇が焼く胸で、詰まる息を振り絞った。
「…こう…いち? …あんた……」
 肩を掴んだ腕に手を掛け見詰める梓の瞳に、歪んだ顔が映っていた。
 自分の情けない顔から目を背け、畳みに落ちた雫に俺は顔を両手で拭った。
「スマン。…そろそろ…初音ちゃんが戻って来る。…台所にでも篭もってろ。…そんな顔、初音ちゃんに見せるな」
 俺は顔を拭い、考え込んだ蒼白な顔に声を掛け、足のふらつく梓の肩を抱き立ち上がった。
 梓を台所で床に座らせ流しで顔を洗った俺は、大きく息を吐き居間へ引き返した。
 居間に戻ると、初音ちゃんが柔らかい栗色の髪を結んだ赤いリボンを揺らし、廊下できょろきょろと辺りを見回していた。
「初音ちゃん。どうしたの?」
 俺が尋ねると、ほっと息を吐き、初音ちゃんは微笑みを浮かべ、とことこと居間に入って来る。
「戻って来たら。お兄ちゃん、いないから」
「ああ、ごめん。ちょと台所で水飲んでたんだ。千鶴さん達は?」
 初音ちゃんの頭に手を置き尋ねると、にこっと初音ちゃんは笑った。
「夕御飯、食べに来るって」
「そうか」
 食事だけでも取るなら、梓に感謝してもいい。
「…耕一お兄ちゃん」
 笑顔を曇らせ見上げる初音ちゃんに笑い掛け、俺は頭に置いた手を動かした。
「大丈夫。夜にでも話してみるから。単なる誤解だから。大丈夫だよ」
 胸に手を置き明るい笑顔を見せた初音ちゃんに、俺は心の中で、守れない約束を重ねる不実さを詫びた。
 居間で初音ちゃんと、伝奇の幾つかを話の種にしばらくすごした後。梓が落ち着く頃合いを見計らい、俺は一人いつも使う部屋に向かった。
 部屋で一人で横になり、よくも梓に偉そうに言えたと、虚しい笑いが洩れた。

 俺自身、最近まで気付けなかった。
 梓に押し付けて。
 俺は、また死んでも業を背負い続けるのか。

 顔を覆った両手が濡れているのに気付いたのは、初音ちゃんが夕飯に呼びに来た時だった。
 俺は濡れた手をズボンで拭き、初音ちゃんと一緒に居間に向かった。
 居間には、姉妹が顔が揃えていた。
 大晦日の楽しい筈の食卓が、重苦しい雰囲気の中、初音ちゃんが何とか話を振ろうとする。だが、千鶴さんは曖昧に返し、俺と目が合うとスッと目を逸らしてしまう。
 梓も上の空で考え込み。
 楓ちゃんは、まあいつも道理と言える。黙々と食べるを実行した。
 気不味い食事が終わると、御節料理の支度で忙しい梓と初音ちゃんを残し、千鶴さんと楓ちゃんは部屋に戻って行った。
 年越し蕎麦処ではない雰囲気に、上の空の梓を手伝う初音ちゃんを残し、俺も早々に部屋に引っ込んだ。
 梓までが考え込み、風呂が沸いたと教えに来てくれた初音ちゃんは、不安を押さえ切れない暗い顔をしていた。
 俺は梓とも、風呂から上がってから話すと約束し。風呂から上がると仏壇の在る部屋に向かった。
 数カ月前、従姉妹達の力になると誓いながら、何も出来ない。いや、より傷つける事しか出来ない腑甲斐なさを、親父と伯父夫婦に詫び部屋に戻った。

 部屋の前の障子に映った人影を認め、俺は息を一つ吐いた。
 俺は重い痛みを胸に障子を開け足を進め、抱き締めたい衝動と戦いながら、後ろ手に障子を閉めた。
 向かい合い正座し、自分の両腿を力を込め握り締める。
 障子越しの月明かりだけが照らす暗い部屋に、そのまま時間だけが流れた。

 どちらも口を開こうとせず。
 ただ向かい合ったまま、時が流れた。

「…私の…せい」
 静かな声が空気を震わせたのは、遠くから微かに除夜の鐘の音が響いて来た時だった。
「…もう…来ないって?」
 薄暗い部屋の中、伏せた目で尋ねる声音が、遠い鐘の音より細く震えた。
「俺のだ」

 誰の責任でもない。
 遠い昔の、俺自身の罪。

「……私が…居なければ?」
「今まで戻っていない。梓はいい、俺だけで済む。だが、二人には辛過ぎる」
「俺だけ? 二人?」
 問い掛け上げた瞳が、微かな光に雫を煌めかせた。
「共存を望んだ妹を騙し、復讐に利用した」
 静かに話す俺の中の記憶が、同族を滅ぼした娘の涙に濡れた驚愕と絶望の表情を浮かび上がらせ、それを見た時の罪悪感が、暗く重く意識を染め上げる。
「…だました?」
「そうだ。話し合うには五分の力が必要。そう持ち掛け。力を手に入れた」
 俺の中の俺が、話す事を拒み抵抗するのを膝に置いた手に力を込め、傷みで抑え俺は続けた。
「恋人の遺志を継ぐ為に助力を求めた妹を、奴は復讐の道具にした。許される事ではない」
「…私の…復讐」
「違うな。奴の意思だ。それに、彼女とは、別人だろ?」
「…えっ?」
 意味が判らないと横に振る首に合わせ、肩の辺りに切り揃えられた髪がゆるゆると揺れた。
「俺が柏木耕一で、次郎衛門ではない様に。柏木楓は、エディフェルじゃ無い」
 頑強に抵抗する次郎衛門の記憶が同じだと叫ぶ中、俺は深く息を吐いた。
「すまない。俺には、約束を果たせない」
 俺の中で涙き叫ぶ声が聞こえ。
 俺は固く目を瞑り肩を落とした。
「……姉さん…ですね」
 洩れ聞こえた声は、問い掛けではなく。
 俺には確認だと取れた。
「そう、千鶴さんだ」
 俺は不思議な気持ちで答えているのに気付き。どこかが、おかしくなったのか。と、訝しく思った。

 泣き叫び彼女を求める俺と、妙に冷めた俺。
 冷静に言葉を紡ぐ俺と、否定し様とする俺。
 二人を見詰める新たな俺が居る。
 そんな気がして、どれが本当の俺なのか判ら無くなって来た。

「君達には、感謝している」
「感謝?」
 俺は楓ちゃんに顔を向け、目を開き微笑みを作り言葉を継いだ。
「僅かな時でも想いを通い合わせる事が出来た。彼女は、君達が居なければ親父の後を追っただろう。彼女が生きているのも、君達のお蔭だ」
 俺は慟哭する心の半分を殺し、楓ちゃんにも辛い言葉と知りながら口にした。
「…姉さん…には、…耕一さん…必要…です」
 震えながらもしっかりとした声に、俺は楓ちゃんの顔に視線を合わせた。
「君達が居る。いずれ彼女なら幸せを掴める。それに、俺が居れば、思い出すかも知れない」

 儚く優しい容姿にも関わらず。
 昔と変わらず心は強い。
 混乱し、深い悲哀の中でも姉を思いやる。
 死の間際までそうだった。

「…姉さんに、その力は……」
 自信なさげに言葉が途切れた。
 それが、俺に可能性が在る事を確信させる。
「リネットと暮らし始めても、奴はエディフェルを忘れられなかった。リネットを愛しながら愛し切れず。罪悪感に苛まれ続けていた。リネットも、奴の想いが自分を騙し一族を滅ぼした罪の意識なのか、姉と同じに愛されているのか、ずっと悩んでいた」
 混ざり合った意識を振り切り、俺は勤めて明るい声を出そうとした。
「…耕…一…さん?」
 俺の声の変化に訝しげに顔を上げ、楓ちゃんはジッと俺を見詰めた。
「初音ちゃんに、そんな記憶を持たせたくない。発現していない以上、未知数じゃないの?」

 運命なのか。
 この時代、四人が再び姉妹として生まれ変わるのは。

「それに千鶴さん。まだ俺を殺し掛けたの気にしてるから。次郎衛門みたいに、罪悪感持ったまま、俺と居ても良くないよ」
 俺を見詰める楓ちゃんの瞳が、僅かずつ僅かずつ瞼に隠されて行く。
「俺みたいに割り切れるとは限らない。いくら昔でも、千鶴さんが思い出したら、どうなる? 幸せには、なれないよ」
 小さく息を吐く音が聞こえ。
 楓ちゃんは、小首を傾げ一度伏せた瞳を俺に注いだ。
「…違うん…ですね…あの人と…」
「そうだよ。今まで生きて来た俺が居る。同じにはならない。記憶や意志は在っても、今の俺の考えとは違うし。流されて従うつもりは無い。そうなったら、俺は柏木耕一ではなく、次郎衛門になる。俺は、俺自身の意思で選んで生きて行く。そう決めたんだ」
 哀しそうに目を伏せた楓ちゃんに、俺は言葉を継いだ。
「楓ちゃんも、もっと外の世界を見ないと」
「私の想いは、…過去の者…ですか?」
 悲哀に満ちた声に応え、心に走った痛みを圧し殺し。
「俺が決める事じゃないよ。楓ちゃんが、どうしたいかが大切だから。誰にも想いは強制出来ない。自分で感じ、自分で考え。自分で判断して決めるしか無い。これ言って千鶴さんに誤解されたんだけどね」
 俺は軽く笑って見せた。
 細かに震える手を身体の前で握り締め、項垂れ考え込んだ楓ちゃんを見ながら、俺は眉を潜めた。

 心の中で騒いでいた奴の部分が諦めた様に。
 俺の中の冷たい部分と混ざりあった様に。
 ざわめきが薄れている。
 奴の想いが、俺の中に深く沈んで行く。
 静かな想いが。三人目の俺が、二つに割れた俺の心を温かく柔らかに包み、一つに溶け合わす様に。

 長く沈黙の時が過ぎ、楓ちゃんは伏せていた顔を上げた。
「……考えて…みます」
 除夜の鐘が遠く余韻を残す静かな部屋に、楓ちゃんの涼やかな声音が密やかに流れた。
 俺は僅かな頷きで、それに応えた。

 千鶴さんと同じく全てを知っていた楓ちゃんも、辛く苦しい日々を送って来た。
 だが、そうと知っていても。俺には、楓ちゃんの想いに応える事は出来なかった。

「行くん…ですか?」
「行くよ」
「……大学…辞めて……一人で?」
 真摯な瞳を注ぐ楓ちゃんの言葉から、梓が話したのが判った。

 本当に頼りにならない。

「そうだよ。勝手だけど。梓が頼りにならないから、二人で、千鶴さんを支えてくれる」
「耕一さん。全部…千鶴姉さん、なんですね」
 楓ちゃんは、小首を傾げ寂しく薄く笑った。
「ごめん。俺が頼める事じゃないのは、判ってるんだけどね」
 今もざわめき続ける奴の狂喜にも似た想いを胸に、俺は話していた。
「残れ…ない…ですか?」
「人の何十倍も苦しんだ。せめて後は、普通に暮らして欲しい」
「どうしても?」
「うん」
 楓ちゃんとあまり長く話した事の無い俺は、常に無く質問が多いのに気付かなかった。
 楓ちゃんはぎこちない微笑みを浮かべ、ゆっくり腕を上げ。
 俺の背後を指差した。
「えっ?」
 俺は振り返り息を飲んだ。
 あの夏の夜と同じ、障子に長い髪の影が映っていた。
「…薬箱…取って…来ます」
 静かに立ち上がった楓ちゃんは、一言残し障子を開け部屋を後にした。
 言われて足を見ると、腿を強く握った指の間から血が滲み、黒い染みが広がっていた。不思議と開け放した障子から吹き込む冷気も、足の痛みも感じない。
 開け放した障子から見える千鶴さんは、俯いた顔を長い髪で隠したまま、廊下から動こうとしない。
 微かな衣擦れの音に目をやると、薬箱を千鶴さんの足元に置き、楓ちゃんの足音が遠ざかって行く。
 足音が途絶え、千鶴さんはスッと腰を落とし薬箱を手に部屋に入り、障子を閉めると俺の前を通り電灯を点けた。
 電灯の眩さに、俺が暗闇に慣れた目を瞬かせている間に、千鶴さんは膝を折り、俺の隣に腰を下ろした。
 千鶴さんは目を伏せたまま、顔を上げ様としない。
 居心地悪さに俺の額を汗が伝い出した頃。不意に息を吐くと、千鶴さんは薬箱を開け、俺のズボンを軽く引っ張った。
 それで俺は、傷の手当てをするからズボンを脱げ。と言っているのに気が付いた。
 俺はズボンを脱ぎながら、どうしようも無く情けない気持ちになった。
 トランクス一枚で足を投げ出し手当てされる姿は、何とも格好が悪い。その上、いつから楓ちゃんとの会話を聞かれていたのかが気に掛かる。
「えっ? ちょ、ちょと…千鶴さん?」
 腕を支えに天上を向いていた俺は、腿に当たる冷たい感触と、さらさらとした髪のくすぐったさに目を向け、焦って声を掛けた。
「……ごめん…なさい…」
 一言呟くと、そのまま千鶴さんは声を殺し、ぼろぼろと雫を滴らせた。
 俺は片手を肩に回し、もう片手を頭に置き、廊下にいて冷え切った身体を抱き寄せ、静かに背中を撫でた。

 俺の腹筋が悲鳴を上げ始めた頃。
 千鶴さんは、しゃくり上げながらも涙を止めてくれ、俺はほっと息を吐いた。
「いつから聞いてたの?」
 座り直し、俺は巻かれた包帯が今にも外れそうなのに苦笑を浮かべ尋ねた。
「…鐘が……聞こえ…始めた…頃です」
 顔を伏せ、表情を隠した髪の間から聞こえた決まり悪げな切れ切れな返事で、俺は頭を抱えた。

 最初から全部?

「梓? それとも楓ちゃん?」
 ようやく俺は、はめられたのに気付き不機嫌な声になった。
 楓ちゃんが話し出したタイミングが、良すぎる。
「ええと。その、楓が……」

 梓じゃないのか?
 楓ちゃんが?

「楓が、その…耕一さんと自分には、雨月山の…悲恋の二人の記憶が在るから。…耕一さんが、いいと言ったら……一緒に行くって。そう言って」
 チラチラ上目遣いに覗く千鶴さんの返事で、ガックリ肩が落ちた。

 俺がいいと言ったら、行かすつもりだったのか?
 自意識過剰もいい所だ。
 まあ、少しは気が楽になる。

「探さなくていい」
 自嘲の笑いが洩れそうになり、俺はぷいと横を向き言い捨てた。
 子供っぽいかも知れないが、出来る事は遣った。後は、楓ちゃんと梓でどうにかなる。
「耕一さん、そんな……」
「楓ちゃんは、連れて行かない」
「そんなんじゃありません!」
 耳元で高い声を上げられ、一瞬膠着した俺は、千鶴さんの様子を横目で伺い、慌てて向き直った。
 千鶴さんは膝に置いた手を握り締め。
 また瞳から、ぽろぽろ雫を滴らせていた。
「千鶴さぁん。泣かないでよ」
 俺は出て行く決心も忘れ、いつもの様に抱き寄せた。

 だめだ。
 とても置いて行けない。
 脆いクセに妹思いで、不器用で、責任感だけ人の何倍もある。
 このままでは、放って行けない。

「判った。行かない。ここに居る。何処にも行かない。だから、頼むから泣かないでよ」
 胸に抱いた髪を撫で、背中を摩り思い付く限りの約束を並べ立て。
 しばらくして、やっと千鶴さんは落ち着いてくれた。


「耕一さん。教えて下さい」
「なん…だった、かな?」
 落ち着きを取り戻し、涙を拭いた千鶴さんが真剣な瞳を向けた時。
 嫌な予感がしたのは、当然の成り行きだった。
「とぼけないで下さい。初音と私が思い出すから、出て行くと言う話です」
 眉を寄せキッと睨んだ千鶴さんは、完全に普段の自分を取り戻していた。

 俺が話さなければ、楓ちゃんに聞くだろう。
 楓ちゃんにも辛い話だ。
 最悪の展開と言える

「判った。でもその前に約束して欲しい。誰も、千鶴さんを恨んでないし。俺が千鶴さんを愛しているって信じて欲しい」
 俺は躊躇い無く頷いた千鶴さんに、不安を抱きつつ話し始めた。
「楓ちゃんが言った通り、俺達には悲恋物語の鬼の記憶が在る。楓ちゃんには鬼の娘。俺には次郎衛門。そして一緒に仇を討つ、さっき話してた妹が、初音ちゃん」
「初音が?」
 眉を潜める千鶴さんに頷き返し、俺は話を続けた。
「うん。まだ記憶は戻ってない。鬼が意思を通じ合わせ、お互いの考えや存在を感じ取るのは、知ってるよね?」
「ええ」
「俺の中の次郎衛門は、初音ちゃんの…前世になる。リネットと柏木の祖になった。だから判るんだろう」
「柏木の祖? …夫婦…ですよね?」
 千鶴さんは不満そうに頬を膨らませ、俯くと俺を上目遣いに覗き込む。
「だから俺じゃないって、次郎衛門。さっきの話し、ちゃんと聞いてた?」
「ご、ごめんなさい」
 慌てて目を伏せ謝る千鶴さん。

 これで楓ちゃんの前世と、次郎衛門の想いの深さが知れたらどうなるのか考え。
 俺は、頭の一振で考えを追い払った。

「俺に記憶が蘇ったのは、多分楓ちゃんの影響を受けたからだと思う」
「鬼が目覚めたのと同じに、影響し合うと?」
 少し考え、千鶴さんは言った。
「そうだと思う。同じ様に力に触発されるんだろう。初音ちゃんの事は、これで判るかな?」
「同族を滅ぼした記憶と、不安な夫婦生活ですか? 確かに、思い出させたくは無いですね」
 考え深げに真剣な顔になった千鶴さんから目を逸らし、俺は言葉を継いだ。
「だから初音ちゃんと楓ちゃんは、昔、次郎衛門と愛し合っていたから、俺が居ると四角関係になって不味いだろ?」

 これで納得してくれればいいが。

「…耕一さん。じゃあ、私の記憶って何なんです?」
 千鶴さんは眉を潜め、訝しげな顔になった。
「いや、そこまでは知らない。千鶴さんにも、記憶が在るだろうって……」
「耕一さん! 胡麻化さないで!」
 冷たく静かな声が響き、俺は一瞬硬直し千鶴さんに目を戻した。

 俺は鋭利な澄んだ瞳と、表情を消した美しい面に目を奪われ魅了されながら、切り裂く様な冷たく寒々しい心の痛みを同時に感じた。
 感情を感じさせない冷たい瞳、引き結ばれた淡い朱の唇。 寒々しい哀しい美しさが、胸を締めつける。
 あの蒼い月夜以来、初めて俺に向けられた彼女の本気の顔だった。
 出来れば、二度と見たくはなかった。

「思い出したらと言っていました。楓も耕一さんも、知っている筈です」

 この女は、何故こちらが胡麻化したい時だけ敏感になるのか。

「耕一さんが話せないなら、楓に聞きます」

 今の千鶴さんなら、どうあっても聞き出す。楓ちゃんも、話す気で千鶴さんに聞かせた筈だ。

 俺は判ったと溜息一つで頷き、覚悟を決め視線を千鶴さんに据えた。
「楓ちゃんの前世。エディフェルだけど。彼女には、二人の姉が居た。上からリズエルとアズエルと言う」
「私達と同じ四人姉妹ですか? 三女が楓で、末が初音?」
 胡麻化すのを諦めたと納得したのか。普段の表情に戻り、千鶴さんは不思議そうに聞き返す。
 穏やかさを取り戻した声を聞きながら、俺の胸には、不安が重くのしかかった。
「今と同じ姉妹だ。リズエルが、千鶴さん。アズエルが、梓だ」
「今と同じ?」
 きょとんとした顔になった千鶴さんに目を向け、俺は息苦しさに大きく息を吸った。
「悲恋物語は知ってるよね?」
「ええ。でも、それが?」
 僅かに首を傾げた千鶴さんから目を逸らし、俺は鼓動の高鳴りを抑え息を吐いた。
「鬼を裏切った娘は、どうなった?」
「仲間の鬼に…殺された? …私が思い出すというのは、それですか? 楓が殺されたのを見ていた? でも、それなら梓も……」
「エディフェルだ」
 言いながら俺は、顎に指を当て考え始めた千鶴さんを包み込む様に抱き、力を込めた。
「遠い過去の話だ。楓ちゃんとは、別人なんだ」
 今の自分達とは違う。と、理解してくれる事を願い。
 俺は髪に頬を寄せた。
「…耕一さん?」
「千鶴さんも、リズエルとは違う」
 突然抱き締められ、戸惑った声を出した小さな身体から徐々に力が抜け。
 やがて小刻みに震え出した。
「…そんな」
「楓ちゃんは、いま生きてる」
「…ちがい…ますよね?…ちがう…って…いって…ね?…こういち…さん……ちがう…って……」
 細い指が俺の腕を締めつけ、震える指が爪を立て微かな呟きが懇願を繰り返す。
 虚ろな震える声と同じ、震える身体を抱く腕に力を込め。俺は胸の艶やかな髪に頬をつけ、震える温もりを包み静かに話し掛けた。
「誰も恨んでない。約束しただろ。彼女も、リズエルを恨んでなかった」
「……かえ…で…を…」
 掠れた呟きが洩れ、ふっと震えが止まり静寂が訪れた。
 細い指が走らす痛みが消え、俺はそっと顔を上げた。
 胸に抱いた千鶴さんは、自分の手を虚ろな穴の様な暗い瞳でジッと見詰めていた。
「…千鶴さん」
 光を無くした瞳の暗闇が、俺に名を呼ばせた。
 ビクッと震え虚ろな闇が俺を見上げた。
「…あっ……あ、あっ…うっ…う……」
 虚ろから湧き出る様に流れが溢れ出し、俺は崩れる身体を全身で包む様に抱き締め直した。
 震える細い指が背中に爪を食い込ませ痛みを走らせる。
 魂を凍え軋ます泣き声が、背を走る痛みさえ忘れさせた。 崩れ虚ろに消え去る様な儚さを強く固く抱き締め。
 慟哭が冷たい刃となって魂を引き裂く。
 声にならない声で泣き、しがみつき瘧(おこり)の様に震える温もりを、俺は彼女の存在を確かめる様に震える腕に力を込めた。


  §§§ 


「もうしばらくでいい、誰も来るな」
「何で?」
「いいから、楓ちゃんに食事だけ運んで貰ってくれ。いいか、楓ちゃんにだ。後、初音ちゃんも。他の誰が来ても近づけるな」
「偉そうに! 千鶴姉はどうしたの!?」

 元旦の昼過ぎ。
 梓との廊下での怒鳴り合いから、俺の一年の幕は上がった。

「今は聞くな!」
 鬼を解放し睨み付けた俺の眼光に、梓は顔色を変え息を飲むと、ぶつぶつ言いながらも引き返して行った。
「スマン」
 一言呟き、俺は踵を返した。

 千鶴さんに妹を殺したというのは、記憶に無い遠い過去でも辛すぎた。
 自分は覚えていないが、当の楓ちゃんが覚えている。
 しかも俺を殺し掛けた記憶が、重なっている。
 あの虚ろな瞳、奴と共有した意識の中で見た。俺の血にまみれた手を見詰めていた瞳。

 明け方近くまで楓ちゃんの名を嗚咽混じりに呟き。そのまま気を失う様に寝入ってくれ、やっと少し安心したが。
 丸二日も部屋に篭もっていた所為もあるだろう。寝顔が酷くやつれて見えた。
 記憶が戻らなかったのが不幸中の幸いだが。
 梓に説明しても遣りたいが、説明の仕様が無い。

「…こう…いち…さん…?」
 部屋に戻ると掠れた声で俺を呼び、千鶴さんは身体を起こそうとした。
「起きたの? ゆっくり寝てればいいのに」
 俺は布団の横で膝を折り、千鶴さんの身体を支えた。
 一晩でやつれた頬が痛々しい。
「食事を運んでくれる様に頼んだから。今日は、食事抜きはだめだよ」
「……欲しく…ないんです」
 千鶴さんは、俺が軽く睨むと首を竦める。
「だめ。骨と皮じゃ、抱き心地が悪い」
 俺が茶化すと仄かに頬を染め、千鶴さんは優しく薄く笑った。
「…どうして…耕一さん、………優しいんです?」
 目を伏せると、千鶴さんは弱々しく呟いた。
「千鶴さんを好きだからじゃ、答えにならない」
「…最愛の人……殺して………」
 千鶴さんの囁きが消え入る様に儚く消え。哀しく胸が詰まる囁きが俺の不安を掻き立て、以前見た崩れ去りそうな姿と重なる。
「千鶴さんじゃ無いだろ? もう五百年も昔の話だ」
「…耕一さん…楓も、覚えてるんでしょ。私が…殺したんですね。楓…殺されて、…どうして……恨めば…いいのに」
 弱々しく呟く千鶴さんは、自嘲の薄い笑みを浮べ暗く沈んだ瞳に涙を滲ませた。
「エディフェルは恨んで無かった。最後に、次郎衛門にリズエルを恨むなと言い残した。一族の掟に縛られ苦しんだのは、彼女だからと」
 俺の言葉にも慰めを見いださず、千鶴さんは哀しそうに俺を見上げた。
「…掟……? …うっ…ふっ…ふっ…昔から…同じ…繰り返して。…何度生まれ変わっても…同じ。…それなら…もっと早く…死ねば良かった。…生まれて…こなければ…いい……」
 熱に浮かされた様に呟く千鶴さんの薄い笑みに、俺の背から頭に冷たい痺れが走った。
 瞳が焦点を定めず、心が壊れた様な虚ろな妖しい光を宿していた。
「千鶴さん、約束しただろ? 誰も恨んだりして無い」
 肩を揺する俺に向けられた瞳は、俺を映していなかった。
「…いや。…何度生まれ…ても…辛いだけ……もう…終りに…させて」
 ゆっくり熱にうなされた潤んだ瞳を俺に向け、口の端が笑う様に歪んだ。
「耕一さん…殺して」
「どうして殺すか殺されるかしか考えない!」
 ぽつりと言った千鶴さんの呟きに、俺は頭から血の気が引き、ふらつく頭で考えるより先に言葉が口を突いた。

 あの時も言った気がする。
 そう、俺が裏山を逃げ惑った時。
 死にたくなければ殺せと千鶴さんが言った時だ。

「…もう…らくに…して…私…殺したいでしょ? …父や母…叔父様の所…行かせて」
「千鶴さん殺して、俺が生きてられる訳無いだろ!」
 見詰める千鶴さんの頬が奇妙に歪み、静かに唇が開いた。
「……楓が。…楓と幸せになって下さい。…妹達……」
 俺は聞いていられず、掴んだ肩を引き寄せ、力の抜けた弱々しい身体を強く抱き締めた。
「…こう…いち…さん?」
 消えそうな囁きで呼ぶ千鶴さんの耳に、俺は囁き返す。
「憎め」
「…にく……?」
「俺を、殺せ」
「えっ」
 抱いた腕にぴくりと伝わった微かな感触に力づけられ、俺は囁き続けた。
「次郎衛門が最初の鬼だ。俺が鬼の血を残した。俺が居なければ、伯父さん、叔母さん、親父は死ななかった。千鶴さんが苦しむ事だって無かった。俺を憎み。俺を恨み。俺を殺せ」
 離れ様と身を捩る身体を強く抱き、弱々しく振られる頭を抱く腕に力を込め胸に押し付け、俺は言葉を継いだ。
「俺が伯父さんと親父を苦しめた。いや、柏木に生まれた者全てを苦しめた。叔母さんや千鶴さんが苦しんだのも。辛い思いをしたのも俺の所為だ。どんなに恨んでも足りないだろ? どうして千鶴さんは、俺を恨まない? 今度は逃げたりしない。このまま殺せばいい」

 死んで済むなら俺が死んでいる。
 死んだって何も変わらない。

「死にたいなら、俺を殺してからだ」
 身を離そうともがいていた力が消え、細い嗚咽が耳に響き。俺はゆっくり腕の力を弱めた。
「すぐとは言わない、俺も過去だと割り切るのに三ヶ月掛かった。千鶴さんにも出来る筈だ」
 片手を髪に移し梳き撫でながら言うと、抱いた身体が震え濡れた瞳が俺を見上げた。
「…さん………?」
「帰る前に記憶は戻った。制御してからもうなされていたのは、記憶の所為だ」
 見上げる瞳が焦点を結び、僅かに生気を宿しているのを目にして、俺は安堵と供に小さく息を吐いた。
「でも昔の事だ。俺は柏木耕一で次郎衛門じゃない。楓ちゃんも、エディフェルとは別人だ。もうみんな、遠い昔に死んだんだ」
 千鶴さんの頬を流れる涙を指で拭い、俺は光りを取り戻した瞳を見詰めた。
「御墓では、死んでた方がマシだと思った。でも俺は、生きてる。生きているから出来る事は沢山在る。千鶴さんが苦しむ必要は無い。もう自分の幸せだけ考えればいい」
「……恨んで……ないん…ですか?」
 尋ねる掠れた声に笑みを向け尋ね返す。
「千鶴さんは、俺を恨まないの?」
 俺は頭を振った乱れた髪を直し胸に引き寄せた。
「昨夜の約束、覚えてる?」
「…は…い……はい」
 俺の身体を細い腕が痛いほどに抱き締め、背を掴む細い指が痕に痛みを走らせながら、安堵を抱いた胸に温かな感触を伝えた。

陽の章 八章

陽の章 十章

陰の章 九章

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