ガンバレ、楓ちゃん

「耕一氏の休日」 YISANさん
 

 朝・・・
 

「こらあ、耕一!いい加減に起きないか!!朝飯が片づかないだろがー!!!」

 久しぶりの休みの日、耕一はまだ微睡みの中にいた。

「ろくな稼ぎもないくせに、寝るのだけは一人前以上なんだから」

 梓に布団ごとひっくり返され、縁側から庭へ落ちていく耕一。

(それが、一家の主に対してすることかよ)

 思っていても口に出して言えないところは、やっぱり耕一だ。
 それを襖の影から楓が見ていた。

「耕一さん、かわいそう・・・」
 

 ・・・・・そう思うなら、先に起こしてやれよ
 
 

 昼・・・
 

「耕一さん、お庭の草むしりをお願いします」
 
 アブラゼミがやかましくがなりたてている昼下がり。
  にっこり笑って、千鶴が言う。

「えっ、いまからですか?」
「耕一さん、今日はお休みでお暇そうでしたから」
「・・・どこまでやるんでしょうか?」
「全部です」
「ぜんぶ?」

 やせても枯れても柏木家、その庭はバカがつくほど広い。

「やはりこういう事は婿殿にお願いしないと。庭師に頼むのもお金がバカになりませんから」
「・・・わかりました」

 茹だるような暑さの中、黙々と草むしりをする耕一。
 それを石灯籠の影から楓が見ていた。

「耕一さん、がんばって・・・」

 
 ・・・・・そう思うなら、手伝ってやれよ
 
 

 夜・・・
 

「ふうう、極楽、極楽」

 結局、日暮れまで草むしりをしていた耕一は風呂に浸かっていた。
 もちろん、一番最後の残り湯だ。
 そこに外から声が掛かる。

「耕一お兄ちゃん。お風呂から上がったら、風呂を洗っておけって梓お姉ちゃんが言ってたよ」
「あ、そう・・・」

 がっくりと耕一が答える。

「耕一お兄ちゃん、疲れているのにね。」
「いや、いいんだよ。初音ちゃん」
「ゴメンね。手伝おうかって言ったら梓お姉ちゃん『甘やかすな』って」
「いいよ初音ちゃん、その気持ちだけで。でも、どうしてもっていうんなら、おねが・・」
「それじゃ、かんばってね。」

  ああ、天使が逃げてゆく。
  泣く泣く、耕一は素っ裸で風呂を洗った。
  それを木戸の裏から楓が見ていた。

「耕一さん、負けないで・・・」
 

  ・・・・・いったい、何にだ?
 

 「でも、たくましい・・・」
 

 ・・・・・おまけに、別なモノ見てるし
 
 

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