誰がために鐘は鳴る
「・・・いや・・・」
「梓?」
「千鶴姉、あたし・・・行けないよ・・・!」
怖い。
どうしようもなく怖い。
耕一が怖い。千鶴姉が怖い。真っ白なウェディングドレスが怖い。
幸福が・・・怖い。
「このままじゃ……千鶴姉が売れ残っちゃう」
地獄へのドアが音を立てて開いた。
手と目が伝える真実
そのとき、千鶴姉が目の前に腰を下ろして手を握ってきた。
「怖いのね? 梓」
ふと目を向けると、千鶴姉が優しくあたしの目を見つめていた。
千鶴姉の表情は優しく、でもとても真剣な顔をしていた。
そして目は赤く、縦に裂けている。
(私だって、その気になればすぐにいくらでも、男なんて……)
ミシミシミシミシミシミシミシ
「いたいたいたいっ千鶴姉、骨が折れるっ!!」