必殺!、仕置鬼サイド(?)ストーリー

必殺、楓ちゃんYISANさん
 

「………………」
 
 そのまま真っ白になり動かない耕一。

「あはは……こ、耕一お兄ちゃん?」
      
 その隣で苦笑しなだめる初音。そして……
 
「耕一さん……かわいそう」
      
 柱の影から耕一を見つめる楓であった。
 
「このままでは済ませません」

 楓の目は紅く輝いていた。
 

 半刻後、楓は縁側に座り沈み行く夕日を見ていた。
 その側に一匹の猫が寄ってくる。柏木家の居候「たま」である。
 
「にゃあ〜」
 
 膝の上に乗り目を細めながら鳴くたまの頭を撫でながら楓はたまと会話を始めた。
 

なお、会話中のかっこは副音声です。


楓   「にゃっにゃあ〜(仕事です)」
たま「にゃっ(仕事?)」
楓   「にゃ〜あ、にゃにゃにゃ〜あ、にゃあ(非道の行いに泣いている人がいます)」
たま「にゃ〜〜、にゃんにゃ(また、耕一か?)」
楓   「………………」
たま「にゃああん、にゃんにゃあ(まあ、いい。仕事料は?)」
楓   「にゃあ、にゃん(めざし一匹)」
たま「にゃああん(相手は?)」
楓   「にゃ、にゃにゃ(千鶴姉さんと梓姉さん)」
たま「にゃ〜〜〜、にゃんにゃん(そりゃ安いぜ!あのふたり相手だぜ?)」
楓   「にゃあ〜ん(不満?)」
たま「にゃにゃにゃ、にゃん(大いに不満だ。俺は降りる)」
楓   「にゃ、にゃあ〜にゃあ(千鶴姉さんの料理、食べたい?)」
たま「にゃあああん、にゃんにゃあああ(どんとまかせな! 元締めのためなら、たとえ火の中、鬼の中)」
楓   「にゃん、にゃ〜〜あ(ありがとう、感謝の言葉)」
たま「………………」
 

 翌日、耕一が仕事に叩き出された後、
 
「千鶴姉、大変だ!給金がないよっ!!」
「なんですって!?ないってどういうことよ、梓!」
「昨日、隠して置いた給金袋がそっくりなくなってるんだ。」
「まさか?あれは私たち以外には決して見つからないように隠していたはずなのに…」
「もしかして、耕一が?」
「いいえ、あの人には見つけられないわ。それにそんな根性もないし」
「それもそうか…だとしたらいったい何処へ?」
 
 その日は上を下への大騒ぎであった。
 もちろん、給金を盗んだのは、たまである。
 たまは夜の内に盗んだ給金袋を、耕一の第十四番へそくりに隠したのだ。だが…

 そのまた翌日、
 
「耕一!なめたマネをしてくれたな」
「なんの事だよ梓」
「私が預かった給金袋、そっくり、猫ばばしようとしたな!」
「なっ、何を言うんだ。俺は知らないぞ!」
 
 預かったのではなく、取ってったんじゃないか、とは口が裂けても言えない耕一だ。
 
「給金袋、何処にあったと思う?耕一のへそくりの中にあったんだぞ!」
「へっ?」
「このおとしまえ、どう付けようか?」
「ちょっと待て、梓。俺は本当に知らないんだ。それにへそくりってなんだよ?」
「梓、もういいじゃないですか。耕一さんも反省している事だし」
「千鶴姉…でも…」
「お給金も戻ってきたし。しかも五両もおまけがついて」
「そうか、それもそうだな。わかった、耕一。今回は大目に見てやる。でももう十四番へそくりは使えないぞ。潰しておいたからな」
「十四番へそくり…あっ!!!」
 
 給金袋に覚えはなくても、五両には覚えがある。小遣いを必死に倹約して貯めた五両だ。
 
「何故だ?何故なんだあ〜!?」
 
 両手を天に突き上げてエリアス軍曹も真っ青な慟哭をする耕一。
 それを楓が障子の影から見ていた。

「耕一さん。……ごめんなさい」
 

 おわり
 

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