愛の電波劇場 瑞佳編   しゃむてぃるさん

 

どうやって教わったかが気になります(意味深)
 

 長森と登校して、校門前で柚木詩子と出会った朝。
 「浩平の事はわかるもん」と言う長森に……

「じゃあ先週の土曜の夕飯、俺が何食ったか当ててみろっ!」
「チャーハン」
「ぐっ、……なぜわかった」

 長森は得意満面の笑みで答える。

「うん、里村さんに教えてもらったんだよっ」

 何をだ? 何を教えてもらったんだ……
 

 

電波にかなうはずもなし(泣)
 

 毎朝長森に起こされる俺はなんとか惰眠を貪るべく、睡眠時間延長計画を実行する。
 第一弾の『ベッド下に隠れ身の術』はあっさりと見つかり失敗。
 そして第二段は……

「浩平朝だよ、起きて……って、またいないよ〜」
(……ん…長森か。しかし今回は見つからんぞ)
「どこだよ〜浩平? わたし先に行っちゃうよ〜」
(ふっふっふっ……さすがの長森も『クローゼットの中で睡眠』とは思うまいて)
「もう……知らないからね〜」

 がちゃっ…ぱたぱたぱた………

(作戦成功。では寝なおすか……ぐー)

 ……ぱたぱたぱた…がちゃっ!

「はうん、戻ってきちゃったよ〜。本当にどこなの?浩平〜」
(ぐー……)
「はう〜、わたしまで遅刻しちゃうよ〜。仕方ないなぁ、もう……」

 ちりちりちりちりちりちりちりちりちり……

「ぐおぉぉぉっ……」

 どんがらがっしゃん! クローゼットから転げ落ちるように飛び出る俺。

「あっいた、浩平。おはよう」

 睡眠時間延長計画……もう止めよう(泣)

 

 

説得力があるよーなないよーな
 
 

 自分の存在が希薄になっていくことを実感していく俺。
 瑞佳ですら俺に関する記憶が曖昧になってきているようだ。
 だが、おれは……

「瑞佳」
「ん? なに浩平」
「できるだけ俺のことを思っててくれよな」

 俺の言葉の真意には気付かず、瑞佳はすこし照れが入った笑みで答える。

「わたし、本当にいつも浩平のこと考えているんだよ。わたしの頭の中にどれだけ浩平のことばっかり詰まっているか、知ったらきっとびっくりすると思うよ」
「そうか」
「それに……今日、始めて名前でよんでくれたね、浩平」
「そうか? じゃあ瑞佳、今日から俺を折原くんと呼べ」
「えっ、その、それは……わたしにとって浩平は浩平だし、やっぱりわたしは浩平って呼びたいしいままでずっと浩平だったから、これからもわたしにとっては浩平は浩平ちゃんでいてほしいし……やっぱり、浩平ちゃんは浩平ちゃんでいいと思うの……だから…」

 瑞佳、別のせかいの幼なじみの電波を受信中……

 

 

 

そういえば忘れてました

 
 クリスマスをやり直すといった冬休みの日。
 俺が長森を夜の校舎に誘い、そして自分じゃない男に迫らせた夜。
 凄まじい裏切り。そうでもしないと瑞佳への気持ちを確認できなかった俺。
 それでも俺を追ってきた長森。解っていた、そして知っていた気持ち。
 そして二人の気持ちを確認した夜。
 そんな夜があけて始業式の日……
 二人とも真っ赤な顔をして上の空で登校した。理由は俺が長森の手を握ったからだ。
 そっぽを向く俺とテレテレ瑞佳。はたからみれば相当間抜けだったろう、でも幸せだった。
 そうして学校の校舎内に入る。……と人が来賓用昇降口に集まっている。

「ん……なんだ? なにかあったのか?」

 来賓用昇降口の外を見ると救急車が止まっている。
 周囲の様子や野次馬どもの話から判断するに、どうやらだれかが運ばれるようだ。

(おい、まてよ……)

 気になった俺は、瑞佳を引きずり野次馬を割って中心へ進む。
 そうして、運ばれる人間を確認出来るところまでたどりついた。
 運ばれているのは……やはりあいつだ! 瑞佳に迫らせた他のクラスの男子だ。

「強い精神ショックだそうよ」
「幽霊でも見たのかしら」
「精神異常も引き起こしているってぇ」
「薬物でもやってたんじゃねぇの」
「どうやら夜から校舎内にいたらしいからな」

 いや、真相は……………ごめんよぉぉぉ……
 

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